第五十四章

ヘンリーの燃えるような視線が、絶えず私を追ってきた。空っぽの封筒――私のささやかな反抗――が、彼の中の危険な何かに火をつけたようだった。角を曲がってからも、背中に穴が開くほどその目を感じる。

私は出口へと足早に向かった。できるだけ距離を稼ぎたかった。ちょうど病院の自動ドアに手をかけた瞬間、強い手が私の肘をつかんだ。

「ハーディング夫人」ジェームズの声が耳元で響いた。「ハーディング様が、少々お待ちいただきたいと」

私はジェームズに向き直り、堪えかねて言った。「彼に言うことなんて、もう何もないわ」

ジェームズは相変わらず抑制の利いた表情を崩さない。「若旦那ビリー様の安全に関わる件です」

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